2025/11/02
新潟市西区 歯周病専門医 いとう歯科診療室のブログをご覧頂きありがとうございます。
今回は再根管治療についての実習でした。
はて?
再根管治療って何?
深い虫歯や、外傷などにより、一度歯医者さんで根管治療(歯の神経をとると表現される)を受けたが、不幸にも根管内に存在するバクテリアに免疫系が勝利することができず、根尖病変ができてしまうことです。
ほとんどの場合、慢性的な病変となるため、症状が出ることは乏しいですが、骨内部に細菌感染が生じているという意味では、歯周病と共通点があります。
なので症状がなくても良い状態とは言えませんし、根尖病変には大腸菌をはじめ、様々なバクテリアが存在しています。
日本では再三、お伝えしておりますが世界基準で根管治療が行われていないため、初回の根管治療の成功率が先進諸国の中では著しく低いため、再根管治療が多い、先進国のなかではお祭り状態です。
一度、歯医者さんがそれなりに治療した部位というのは、再度、治療を行うにしても初回に比べて成功率は下がります。
米国では初回の根管治療を世界基準で行うため、再根管治療のケースが著しく少なく、再根管治療を飛ばして次のステージ、つまりは歯根端切除、意図的再植へ移行します。
1回目の根管治療がどのような状況下で行われているのか?どのような治療がなされているのか?が再根管治療の難易度を左右すると思います。
これが面白いことに、拙い治療が行われていれば、再根管治療で治癒する可能性が高いのです。
一番大変なのが、ラバーダムもせず、口腔内のバクテリアが入り放題の状況で一生懸命根管治療が行われ、必要ないのにガッツリとメタルポストが装着されているケース。
元々の根管の形態が破壊されているケース、歯肉に近い位置で歯に穴が空いているケース、その難易度は様々です。それぞれ成功率の目安があります。やってみないとわからない部分もありますが、それぞれのケースで成功率の目安があるのがアメリカの歯科教育の先進性を感じてしまいます。
前回、座学で再根管治療のあれこれを学びましたが、今日は装着されたメタルポストコアの除去方法、根管内のガッタパーチャの除去方法、再根管形成の実際、などについて実習しました。
メタルポストを外す際に、ドライバーや、ましてや兼松鉗子を使用することはありません。歯根破折を誘発するので。
セメントのラインが出るまで、歯質をなるべく削らないよう、専用の切削バーを用いながらメタルポストを削ります、あとはVPチップを装着した超音波で除去していくというもの。
この専用の切削バーは単回使い切りで約3,000円します。保険診療ではポスト除去は600円だか800円だかしか頂けないので、1本のバーですでに赤字です。この値段設定した人は自分でメタルポストを外したことがない人でしょうか?まあ、それは日本の医療あるあるなので。
再根管治療は、最初の根管治療に比べて、除去しなければならない物も多く、器具も増えるし大変です。
メタルポストコア、ファイバーポスト、コアレジンなどを除去して、根管内に充填されている、薬(ガッタパーチャ)を除去したあとは、通常の根管治療のプロトコールに戻ります。
このガッタパーチャを除去する手順も、従来の日本の方法では効率が悪いため、そのための薬剤と超音波、除去するための器具を使用して根管内になるべく残存しないよう除去していきます。
顕微鏡で内部を確認しながら進めていくので、今までのようになんとなく除去して、根尖まで器具が届けばよし、という状況から一変しました。
今までも再根管治療は大変だったけど、もう少し、確実に丁寧で、システマチックに進めることができそうです。ただ、丁寧に進める分、時間はかかります。
パラレルに入ったメタルポストは外せない!一度根管内に入れたものは完全には除去できない!ことを僕ら日本の歯科医師は考えた方が良いですね。
そして相変わらず素晴らしい実習施設。すべてのデスクに顕微鏡が完備され、歯科治療に必要なタービン、エンジンもある。これがとても獣医師の研修施設とは思えない。
自費診療の獣医師と、保険診療の歯科医師、気づいたら随分と差がついてしまったようです。
さてこのコースも中盤を過ぎ、次回は最後の座学「生活歯髄療法」です。これは自分も今まで取り組んでいた分野なので、楽しみです。